北向き地蔵の桜(奈良、宇陀市)
奈良県宇陀市の又兵衛桜と言えば、2000年のNHK大河ドラマ『葵 徳川三代』のオープニング映像で一躍有名になり、満開の頃になると田舎道も渋滞は当たり前。
そんな大人気の又兵衛桜。その近くで孤高に咲く北向き地蔵の桜をご存知でしょうか。
又兵衛桜へ向かう入り口付近に「北向き地蔵の桜」と案内があるので、場所は簡単に分かると思いますが、実際に行ってみると…
又兵衛桜の人だかりに対して、こちらは殆ど誰もいない。
ちなみに、北向き地蔵って、なぜ北向きなんでしょうね。
中国では「王者南面」と言う思想があって、宇宙の中心とされる北極星の方向、すなわち北は上座と言う考え方。だから日本でも平安京など、天皇の座する位置は都の北、そして南向きに作られた。そんな話を聞いたことがあります。
神や皇帝は北を背にし南を向く…、そう言えば、仏壇は北向きはダメと聞いたことがあるけど、この辺も関係しているのかもしれません。
で、なんで北向き地蔵なの?
お地蔵さんは、地蔵菩薩とも呼ばれ、菩薩の一尊。菩薩といえば、釈迦が悟りを開くまでの修行を一心に行っている時の姿とされ、衆生済度のために奔走されている姿。
地蔵菩薩は最も弱い立場の人々を最優先で救済する菩薩なのです。
この地蔵菩薩も色々な役割があり、一般的には南向きのお地蔵さんが多いそうです。その中でも北向きのお地蔵さまは、全国的にも400体ほどしかなく珍しいとか。
神の座でなく、あえて人と同じ下座。北向きに配されている北向き地蔵は、めっちゃ私たち目線で見守ってくれている、ありがたいお地蔵さまなのです。
もし、出会えたら「ありがとうございます」と感謝を伝えたい。
このような案内もありました。
その北向き地蔵の横で、孤高と咲く桜…
もちろん、又兵衛桜と比較したら規模もインパクトも全然違います。
華やかさはないけど、心に響く美しさがある。又兵衛桜の時も感じましたが、同じように何かを語りかけてくれてるような、そんな心地になってくる。
遠くには、又兵衛桜が見えます。
ほら!
圧倒的な人気を誇る又兵衛桜。
確かに又兵衛桜は素晴らしい。人気もある、有名でもある。
でも、そこだけを目的にして帰ってしまうのでは勿体ない。人が集まるところ、雑誌やネットで紹介されてる名所にだけ目を向けるのは寂しものだ。
スポットライトを浴びていないからこそ、素晴らしいものがある。世の中は、まだまだそんな魅力で満ちあふれている。
北向き地蔵の桜
場所:奈良県宇陀市大宇陀本郷