きじ(大阪、梅田)
大阪に数ある「お好み焼き屋」の中でも、きっと5本の指に入るほど名の知れた店。そう、ここは新梅田食道街にあるきじ 本店です。
ガタンゴトン、ガタンゴトンと電車の通る音がして、少し哀愁漂うレトロな飲食街の一角にある。古めかしいお店。
大阪のお好み焼きと言えば「きじ」と言うイメージがあるほど、名の知れた店。店の前には行列がズラリと出来ている日が多い。とにかく超人気のお店なのです。
土日は1時間待ちは当たり前の世界。
私が行ったのは平日の14時頃。さすがに空いていました。普段は並ぶ根性がなく諦めていたので、実は今回が初めての利用です。
入り口を過ぎると、スグに階段があり、狭い階段を上がり2階に来るとカウンター席とテーブル席が4つほどある。小さなお店。
お店の方は小さな声で「らっしゃい」と呟くように言う… そして「カウンター座ってね」と愛想のかけらもない。更に席に座ると「もっと横によってくれるかな」「それじゃ~次のお客さんが座わりにくいでしょ」と。超不愛想。
ワクワクしていた期待感が薄れて行く…。
ただでさえ隣の人と肩が擦れ合ってるのに、さらに横に詰めろと言う。まさにギューギュー詰め。このカウンター席はイスの数を一つ減らした方が良さそうなほどなのに…。
目の前の鉄板からは温もりを体に感じ始めたころ、この狭い環境にも慣れて来る。お世辞にもお洒落とは言えない古い店、電車の走る音が聞こえ、お店の方はすこぶる不愛想。
そして、ここで注文したのは一番単価の安い「豚玉」だ。この不愛想な接客に対する密かな抵抗のような感じ。
「豚で…」
本心を言えば、シンプルな豚玉が一番好きと言うのもある。でも実は「きじ 名物 もだん」が気になっていた。でも、そっちが不愛想なら、こちら負けず不愛想にボソッと一番安い品を注文することにしたのだ。
特に会話もない静かなカウンター席。ジッーと店主が調理する姿だけに目が行く。ただ目の前で焼き上げるお好み焼きは、実に丁寧。慣れた手つきだけど、体全身で一つ一つのお好み焼きと対話してるかのような焼き方、思わず見とれてしまう…。
隣のおじさんも、その隣の女性も皆が、店主が作るお好み焼きに視点は集中している。その眼は優しい。
メニュー表には「目に言う」と書かれた不思議な言葉。もしかして、「黙って俺が作る様を見てろ」ってな意味しているのか?「余計な言葉はいらん」だろうか??普段なら「これってどういう意味?」と聞く所だが、今回は沈黙する(不愛想だから)。
目に言う…。意味は分からんが、すごい奥深い気がしてきたぞ。
ただ、とにかく、どこの誰とも知らない隣のおじさんと肩をぶつけ合いながら目の前のお好み焼きを見つめている。不思議だけど、何だか妙に居心地がいい。
つい先ほどまで、不愛想な店だと感じていたのに、そんな事もすっかり忘れてしまったような心地になってきた。こうゆう店は間違いなく美味しいのだ!
できた…!
ザク!ザク!と十字に切れ目を入れて、今度は完全に切れないように軽くコテでお好み焼きを凹みを入れる。こうするとソースが浸み込んで益々うまくなる。
アツアツの状態で口の中に入れて見ると、疑惑は確信に変わった!これは想像以上だ。
このカリカリ感は豚肉だ。うまい!そして柔らかい生地に弾力ある口触り。お好み焼きに「コシ」がある。と言うと変な表現になるが、そうコシがある感じ。
なるほど、これが「きじ 本店」の味なのね。確かに美味しい。でも、この店は行列して待って食べる味じゃない。上手く言えないが、インパクトある味ではなく、並んで食べると普通に感じてしまいそう…。
この店は、待って待って食べるんじゃなく、ふらっと立ち寄って、地味に味わって食べてこそ本当の良さが分かる感がある。
食べ終え、新梅田食道街をぶらっと歩いてると、先ほどの店主さんと偶然にすれ違った。そして目が合った瞬間、「また来てや」と呟くように話しかけられた。今度は笑顔付き。あぁ~ここは不愛想なんかじゃなく、本当の職人さんなのだろう。
もちろん、また行きますよ!!
きじ 本店
住所:阪市北区角田町9-20 新梅田食道街
電話:06-6361-5804
営業:11:30~21:30 日曜休み